慌ただしく時間 › 2017年03月

2017年03月03日

助手席ヒカル

その辺は・・・、どんな感じなの?」
とチハルは自分のグラスに手酌でビールを注ぎながらそう彼女に尋ねる。
わたしはこのところ、そっちの方は全く」
あら、そう。
キレイなのにもったいない」
ヒカルさんはアンタとちがって一途なのよ。
ずっと好きな人がいて・・・、ね?
ヒカルさん?」
へえ、そうなの?」
まあでも、そっちの方も今はちょっと」
ちょっと?」
とチハルはとりあえず相手かまわず突っ込む性格だ。
いいじゃない、彼女は。
それより肝心のアンタはどうなのよ?
仕事はいまいちって言ってたけど、オトコの方は相変わらずなんでしょう?」
あのねえ。
まあ、そう評価していただけるのはありがたんだけどさあ。
あたしだってもうすぐ40だよ。
そんなにポンポン次々って行けるわけないでしょう?」
あら、さすがのチハル先生でも、やっぱ年には勝てないってわけですか?」
いやあ、ほらあたしの場合は若い時に派手にやり過ぎたでしょう?
もうそのギャップでここんとこ最悪。
もしかしたら、むしろそっちの方が鬱の原因かも」
何?
好きな人にでも振られた?」
いやそんなんじゃなくてね」
じゃあなんなのよ?」
するとチハルは例によってわたしの想定範囲を遥かに越えるこんなことをいきなり語り始めた。

あたしさあ、ちょっと前まで・・・、デリヘルで働いててね」

『東口交番前のドーナッツ屋あたりで』
とのメール通りにチハルはメルセデスのゲレンデワゴンを車道沿いに停めており、わたしたちもそれに気づくとすぐにそちらへと駆け寄り、わたしはその助手席、ヒカルさんはその後部座席へと乗り込んだ。

おは~、ごめんね〜。
ちょっと散らかってるかも」
と言ってチハルはその後部座席に乱雑に散らばっている雑誌や小物類などを片方の端へと寄せ、ヒカルさんの座るスペースを作る。
ああ、あの、もう大丈夫みたいです」
とヒカルさん。
彼女、ジンナイヒカルさんね。
今はヒーリングのカウンセラーをやってるの」
とわたしがヒカルさんをチハルに紹介する。
それでもってこっちの彼女が大学時代の友人のチハル」
へえ・・・、初めまして。
ヒーリングカウンセラーって、なんか凄いですね」
えっ?
ああ、いえ、そ、そんな・・・、大したことないです  


Posted by 慌ただしく時間 at 15:36Comments(0)